高校野球部の仲間達と、久方振りに会った。
こうやって集まるのは、一体いつ振りだったろうか?
それはつまり、腹が痛くなるまで笑い転げたのが、久方振りということになる。
みんな健康そうで、結婚をしていないのは僕を含めた数人だけになり、
実に幸せそうだった。
僕は。実は。
ちょっと笑えないような毎日をこのところ繰り広げていた。
鬱屈し尽した日々を送っていた。
そんな僕ですら、大馬鹿者共(最上の敬意)の前で心の奥から笑い転げた。
高校の頃は、こうやって毎日笑い転げていたのかな?
特に仲の良い部だったからな。野球はめちゃくちゃ弱かったけど。
二次会のカラオケでは当然、ゆずの『夏色』からペニシリンなど、
当時の流行り歌。
「あの時お前は…」
「あの後ほんとうは…」
なんて、何度も繰り返された思い出話をまた繰り返す。
しかしグラウンド以外でも時間を共有し続けた僕らには、
それを語り尽くすことはできず、
また共有の思い出がひとつ、積み重なる運びとなった。
そんな中で実に久し振りに参加したエースが
「ミーティングで高見に言われた」
と、こんな話をした。
「『お前はそれじゃあかん。協調性がない』って。
俺な、今でも時々その言葉思い出すねん。
今日はそれを言おうと思ってここに来たんよ」
正直、うちのチームはエースのワンマンチームだった。
彼が居ないと野球にならなかったと思う。
エースは誇り高く、どちらかと言うと幼稚な他の野球部連中とは
そりが合わないところもあった。
30を過ぎて、彼はその言葉にひどく感謝していると言った。
「大人になったんやな」
僕が言うと、
「おう。当時は判らんかったけど、今思い出したら
ほんまに嬉しいわ」
試合に勝つ。
当然、そのひとつの目的の為だけに僕らは汗を流した。
最後の試合に敗れ、涙を流し、高校も卒業して散り散りとなり、
それぞれの道を歩み出したけれど、みな、原点とは言わぬまでも、
共有した時間を、心の片隅に抱いて、日々を過ごしてきたのだと知った。
マネージャーが、子供をふたり連れて来ていて、
僕は沢山遊んでもらった。
まっすぐ過ぎる瞳に見つめられ、僕も同じようにはしゃいだ。
「自分達を楽しませてくれる」と、子供達は期待を絶やさず、
僕もそれに応えようと一生懸命戯れ事を繰り返した。
その末、
子供達が撮った一枚(笑)
「市川團十郎にござりまする~」
母になったマネージャーは、一歩引いたところで、
子供達の動きにずっと目を配っていたのが印象的だった。
おかんってのは凄いもんだな。
におい。
人の発するにおいがある。
多く、僕はそのにおいに惹かれ、恋人を選んできたように思う。
だから、香水でそのにおいを消すことほど、
愚かしき行為はないと思っている。
これは個人にのみあるものだと思っていた。
しかし。
集団にもにおいがあることを今回知った。
当時のみんなで集まると、やっぱり当時のにおいがするのだな。
そしてその懐かしきにおいは、僕の心をとても落ち着かせる。
もしかしたら、久し振りの再会でも、
あっという間に打ち解けるのは、
知らず知らずこの、においが作用しているのやも知れぬな。
また「誰か足りない」とすぐ気付くのもこの、においの仕業やも知れぬ。
本当に10年振りくらいの仲間もいれば、消息が掴めない仲間もあった。
時間が来て、二次会のカラオケ屋から追い出され、
同じ方面の連中とタクシーに乗り、
今や、別荘となった無人の実家へと帰った。
目覚めたのは8時。
これがよく眠ったのか、或いはそんなに寝ていないのか、
僕は知れない。
帰ってきた時間を知らないからだ。
ほんとうに心地よい二日酔いを味わい、
外を見ると、夜中に降ったと思われる雨が地と紅葉を濡らしていた。
雲は中休みに入ったようで、その切れ間からは光が漏れていた。
ここが時なり、と、僕は元のスーツ姿に戻り、
自宅のある難波へと足を向けた。
道すがら、昨日のことを思い出しては、
笑いをこめかみで噛み殺した。
噛み殺しても噛み殺しても、肚の底から笑いが沸いて来た。
この感情を携えて、日々を渡ることが、どれだけ大切であるか、
僕は思い知らされた。
「俺にはあいつらが居るじゃないか」
いつもいつも馬鹿なあいつらが、今も変わらず。
二日酔いはものともせず、足取りは、軽かった。
こうやって集まるのは、一体いつ振りだったろうか?
それはつまり、腹が痛くなるまで笑い転げたのが、久方振りということになる。
みんな健康そうで、結婚をしていないのは僕を含めた数人だけになり、
実に幸せそうだった。
僕は。実は。
ちょっと笑えないような毎日をこのところ繰り広げていた。
鬱屈し尽した日々を送っていた。
そんな僕ですら、大馬鹿者共(最上の敬意)の前で心の奥から笑い転げた。
高校の頃は、こうやって毎日笑い転げていたのかな?
特に仲の良い部だったからな。野球はめちゃくちゃ弱かったけど。
二次会のカラオケでは当然、ゆずの『夏色』からペニシリンなど、
当時の流行り歌。
「あの時お前は…」
「あの後ほんとうは…」
なんて、何度も繰り返された思い出話をまた繰り返す。
しかしグラウンド以外でも時間を共有し続けた僕らには、
それを語り尽くすことはできず、
また共有の思い出がひとつ、積み重なる運びとなった。
そんな中で実に久し振りに参加したエースが
「ミーティングで高見に言われた」
と、こんな話をした。
「『お前はそれじゃあかん。協調性がない』って。
俺な、今でも時々その言葉思い出すねん。
今日はそれを言おうと思ってここに来たんよ」
正直、うちのチームはエースのワンマンチームだった。
彼が居ないと野球にならなかったと思う。
エースは誇り高く、どちらかと言うと幼稚な他の野球部連中とは
そりが合わないところもあった。
30を過ぎて、彼はその言葉にひどく感謝していると言った。
「大人になったんやな」
僕が言うと、
「おう。当時は判らんかったけど、今思い出したら
ほんまに嬉しいわ」
試合に勝つ。
当然、そのひとつの目的の為だけに僕らは汗を流した。
最後の試合に敗れ、涙を流し、高校も卒業して散り散りとなり、
それぞれの道を歩み出したけれど、みな、原点とは言わぬまでも、
共有した時間を、心の片隅に抱いて、日々を過ごしてきたのだと知った。
マネージャーが、子供をふたり連れて来ていて、
僕は沢山遊んでもらった。
まっすぐ過ぎる瞳に見つめられ、僕も同じようにはしゃいだ。
「自分達を楽しませてくれる」と、子供達は期待を絶やさず、
僕もそれに応えようと一生懸命戯れ事を繰り返した。
その末、
子供達が撮った一枚(笑)
「市川團十郎にござりまする~」
母になったマネージャーは、一歩引いたところで、
子供達の動きにずっと目を配っていたのが印象的だった。
おかんってのは凄いもんだな。
におい。
人の発するにおいがある。
多く、僕はそのにおいに惹かれ、恋人を選んできたように思う。
だから、香水でそのにおいを消すことほど、
愚かしき行為はないと思っている。
これは個人にのみあるものだと思っていた。
しかし。
集団にもにおいがあることを今回知った。
当時のみんなで集まると、やっぱり当時のにおいがするのだな。
そしてその懐かしきにおいは、僕の心をとても落ち着かせる。
もしかしたら、久し振りの再会でも、
あっという間に打ち解けるのは、
知らず知らずこの、においが作用しているのやも知れぬな。
また「誰か足りない」とすぐ気付くのもこの、においの仕業やも知れぬ。
本当に10年振りくらいの仲間もいれば、消息が掴めない仲間もあった。
時間が来て、二次会のカラオケ屋から追い出され、
同じ方面の連中とタクシーに乗り、
今や、別荘となった無人の実家へと帰った。
目覚めたのは8時。
これがよく眠ったのか、或いはそんなに寝ていないのか、
僕は知れない。
帰ってきた時間を知らないからだ。
ほんとうに心地よい二日酔いを味わい、
外を見ると、夜中に降ったと思われる雨が地と紅葉を濡らしていた。
雲は中休みに入ったようで、その切れ間からは光が漏れていた。
ここが時なり、と、僕は元のスーツ姿に戻り、
自宅のある難波へと足を向けた。
道すがら、昨日のことを思い出しては、
笑いをこめかみで噛み殺した。
噛み殺しても噛み殺しても、肚の底から笑いが沸いて来た。
この感情を携えて、日々を渡ることが、どれだけ大切であるか、
僕は思い知らされた。
「俺にはあいつらが居るじゃないか」
いつもいつも馬鹿なあいつらが、今も変わらず。
二日酔いはものともせず、足取りは、軽かった。